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| 納島正弘と知り合って、もうかれこれ8年にもなる。 当時彼はさる広告会社のアートディレクターをしていて、既にフリーランスとなっていたプランナー&コピーライターの小生との打ち合わせに赤いフランネルのタータンチェックのシャツで現れた。そして、にこやかに差し出した名刺の名前の肩に、自分自身のキャッチフレーズであろうか、「悠々として、急げ」と刻んである。 なかなかキザな奴だ、と思いつつ、この人物に急速に興味を覚えたことを思い出す。 後で彼と話して判ったことだが、「悠々として、急げ」とは我々の大先輩コピーライターにして日本の生んだ豪胆無比の旅行作家・開高健の座右の銘であった。我ながらこれは迂闊と額を叩きつつ、同時に納島のいかにも60年代生まれらしい文人感覚に、「ふふ、チョコザイな」と親愛の微笑を送った。 以来彼とは多くの仕事を共にしてきた。この男の仕事はいつも速く、的確である。60年生まれである点、ワイフも同い年である点、アナログを標榜する点と共通項も多く、それだけに考えていることが何となく読めてしまって時に何となく居心地も悪い。これぞ同時代人のよしみであろう。 しかし、実に優しい人間である。人に、そして自分の愛する世界に。 その彼の愛する世界の一つに、釣りがある。 さて、紹介がつい長引いたようだ。今後は、彼自身の文章に委ねるとしよう。 タイトルは、「今日もボウズ」。う〜ん、やっぱり納島正弘だ。 |
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| 【其の一:釣れなくても楽しむこと】 | ||||
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私は年から年中、マッキントッシュの前に張り付いて仕事をしている。 そんな生活を続けていると、水辺の空気が恋しくなって、流れや波の音が頭の中で充満してくる。 釣りが好きだ、しかし釣技は競わず(競えず)乱獲しない(出来ない)趣きを重んじる釣り人でありたい・・・ それが私のモットー。 平成13年4月、今年も渓流解禁日が訪れ、街の中でやっと花粉症がおさまってきたというのに、わざわざ杉が花粉を絶好調に飛ばしている渓流へ出かけていった。 (竿を持ちながら、鼻水ダラダラ、目がグショグショ) |
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今回は、「銀座東作」で買い求めたばかりの餌入れを持っていく。 丁寧に作られた木製で、二つに仕切られた部屋の片方には、養殖ミミズの「みみちゃん」を入れ、もう片方には、ダイワの「爆釣イクラ」を入れて準備万端。 (しかし、なんで釣り商品のネーミングにはすごいセンスのものが、多いのか?養殖のブドウ虫には「バイオちゃん」オキアミには「ナマイキくん」ていうのもある) |
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2年ぶりの渓で竿を出して4時間・・・・なんと今年はいきなりボウズ。 一緒に行ったデータフィシング派のカメラマンは、二桁釣っていたというのに。 綺麗な空気と流れの中で、好みの道具で釣り糸を垂れる、精神は浄化される、それだ けでいいんだと自分に言い聞かせても、帰りの車の中では、会話もはずまない。 さ、早く帰って道具の手入れしないと・・・きれいなままの魚籠が助手席から転げ落ちた。 |
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