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| 納島正弘はけっこう慎重者である。 石橋は必ず叩いて渡るタイプだ。 しかし、それだけじゃイヤだという部分を当然持っている。 このイヤだ、いや、本人流に言えばたぶんイヤじゃという部分が納島正弘をして愛嬌者にさせている所以のものだということを私はよく知っている。 では、どういう愛嬌かといえば、憎めないという部分だろう。 部屋のあっちこっちを走り回って書類に飛び乗りベロベロにするからたしなめようとするとクリッとした目で顔を覗き込むビーグル犬にちょっと似ている。 今回はどうもそういう部分が出た話のようだ。 |
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| 【其の四:「未知との遭遇」のこと】 | ||||
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釣りに行くと、色々なものに遭遇する。 渓流の傍で、テントを張っていると、タヌキの一家に囲まれてみたり、谷を這い上がっているとヘビとコンニチワしたり、子熊にじゃれつかれて一目散に逃げた(近くに母熊がいる)という釣友もいる。 昨年冬、そろそろメバル釣りの便りが聞こえてきたので、某音楽大学の教授と朝も早うからいそいそと教授所有のボートで少し沖に出た。 この船外機付きボートは、折り畳み式で二人で乗るのが精一杯、木の葉のような舟なのである。しかし、教授曰く・・・「これはフランス製で、しかもフランス海軍が御用達にしていて、ちっちゃいわりには硬派な横顔を持つすぐれものなんですよ。」 この日は一段と寒く、二人とも防寒ニットの怪しい覆面おやじだ。竿先を見つめること一時間、親指より少し大きいくらいのメバルが2〜3尾、波に揉まれる木の葉ボートの覆面おやじコンビは、疲労の色が見えてきた・・・とその時、巨大なニュートラルグレー、威圧感たっぷりの壁がゆっくりと、近付いてきた。 ぬう〜と、ゆっくりと接近してきたのに、我が木の葉ボートは、その巨大船の近付く波でもみくちゃ、覆面おやじ達は、舟の枠を両手で持ったまま見上げた。 |
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メガホンの声で「そこのボート、免許証を見せなさい。」 ・・・海上保安庁の巡視船だった。何度もこのボートで海に出ている教授はこんなのは初めてらしく、呆然としていた。 当局:「二人とも、救命胴衣を着ていないじゃないですか。」 覆面おやじA:「沖に出るつもりはなかったんで・・・」 木の葉ボートは動揺する。 当局:「船にナンバープレートの表示がされてないじゃないですか。」 覆面おやじA:「この舟には付けるところがないんです・・・」 フランス海軍木の葉ボートますます波に動揺する。 |
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こちらが、いくらフランス海軍だって勝ち目はなさそうだ、しかもこの覆面だ、どう見ても怪しい、やばい。 スルスルと妙におなじみのタモ網が伸ばされて、 当局:「このアミに免許証を入れなさい。その箱の蓋を空けて中を見せなさい。」 拳銃か大麻でも入っていると疑われているのか!・・・。 タモ網で押収された免許証を見ながら当局3名はコソコソなにか話し合っていた。 午後から3時間かけて、海上保安庁でたっぷり取り調べ。 当局はこの覆面おやじAの正体を知って、恐縮はしたものの罰金は容赦なく十五万円也。 あれから一年半経って初夏の朝、木の葉ボートの上で麦藁おやじコンビが、レモンイエローとオレンジの救命胴衣を着て、ニヤニヤ、ニコニコ、入れ食いなのだ、メバルが。 |
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