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納島正弘は愛妻家である。
同時に、いやひょっとするとそれ以上に愛娘家でもある。
(これは彼が家族思いであることを誇張せんがための表現であって、他意はない)
いやいやひょっとするとそれ以上に愛犬家だったりする。
(これに関しては事実、あ、いや彼が犬思いであることを誇張せんがための表現であって、他意はない)
いやいやいやひょっとするともしかして、それ以上に愛釣家なのだった。
(これに関しては読者のご想像にお任せするのであって、他意はない)
今回はそういうイロイロのナイマゼがなんともいえない味を醸し出す話である。

【其の五:夏はサビけ!のこと】


(携帯電話)
「先生、なにやらサバが廻って来てるみたいですぜ。」
「でも、・・・・現代美術館、迫ってるから・・・・」
「アジもワンサカおるらしいよ。」
「でも、まだ小さいだろ?」
「小さい。」
「サバも20cmぐらいじゃないの?」
「そうだと思う。」
「作品仕上げないと・・・でも、・・・行く?」
「行きましょうや。」

この夏の仕上げに画伯を口説いて彼のアトリエがある島へサビきに行った。
4、5年前ならこのような大味な釣りは、敬遠していたのだが、最近ではどんな釣りで
もその行為自体が楽しくて仕方がない。「フライ以外は皆、下等。」とか「ブラック
バス、オンリー!」なんて格好付けて、あの辺とかあの辺の某釣り具店に集まる方々
と同類だった自分を恥じる今日この頃。

さて、サビキ釣りであります。4、5本の枝針の下にワイヤーの重り付き籠を付けて、その中にコマセをつめる。そして、手榴弾ぐらいの大きさの浮子で水中に吊るす。
枝針にはゴムの切れっぱしのようなものが付いてて、波にひーらひら、ひーらひら、するのだ。魚はコマセのオキアミに突進してきて、ひーらひらのゴムちゃんをオキアミと間違えて喰わえる、この日は小学生くらいのアジや思春期のようなサバが、ゴムちゃんに猛烈アタックしてきた。

仕掛けをドンガラガッタと投げる
「忙しい釣りだなあ今日は!」と叫ぶと、浮子がモコモコ、ズボッと沈む。
「サイズがこまいのお!」と画伯。
「それでも来たかったんでしょ!」と答える、釣り師とは贅沢なものだ、数が多いとサイズが小さいと不満を言い、ボウズになりそうな時は小さくても一匹は一匹と言う。

南蛮漬け用の小アジと、から揚げ用の小サバをたくさんクーラーに入れて家路につく。
「今日もボウズ?」と妻、「なにを言うか、どうだ!」と私、
「うぁ〜小ちゃいのがいっぱい!」
「・・・・南蛮漬けが食べたかったんだよ。」と言い訳よりな言葉。

その日の夕餉に赤絵の深鉢に南蛮漬けがドッサリ。ビールのコップ片手に2〜3匹摘
む。妻や娘もちょっと摘む。次の日もその次の日も小アジの南蛮漬けはテーブルにお
出ましになるが、主役は初日だけで、すでにその座は、チキンや餃子にうばわれ、唯
一私のみが横目で見つめつつ摘み続ける・・・・。

画伯曰く、「大漁も困りもんじゃのう。」・・・同感。


納島 正弘
E-mail: beagle@orange.ocn.ne.jp
Website: http://www1.ocn.ne.jp/~hound/

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