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<連載第2回> | |||
「はぁ〜どーしよ」 「今夜の宿、探さなきゃ。」 時計を見ると、PM8:00。どうりで空港にひと気が少ないはず、あてにしてたインフォメーションもとっくに閉まっている。ますますひとりぼっち・・・・。はっ、HISのお兄ちゃんが爽やかに言っていたことを思い出した。 「最初の宿は予約をしてから行くほうが楽だし安心だよ」 その言葉の意味がここまで重かったとは思いもしなかった。それならそうと、もっと臨場感たっぷりに脅し口調で言うのが世のため人のためだと、呪った。 ともあれ、ここから動かなければどうにもならない。入国カードに適当に書いた「地球の歩き方」に乗っていたホテルに行かねば!相当心細かったのか、自分を見失っていたのか、他のホテルを見る余裕もなく、藁をも掴む思いでそのホテルに直行しようとしていた。といっても、何処にあるのかさっぱり検討もつかず。UnderGroundの看板が見えたので地下鉄に駆け込む。ひと気がしてほっと一息、少し落ち着きを取り戻す。最初の国のお金ぐらいは持っておいた方がラクだし、日本の銀行で簡単に換金してくれると聞いていたので、呑気な私としては奇跡に近いほど珍しくイギリス通貨を持ち合わせていた。 (おぉ!!運が俺に向いてきた!!!) そう思っているのは今のうちだけだった。 そのホテルの最寄り駅がEarl's Court駅。ヒースロー空港からほど近い駅で、最悪は戻れば何とかなるかなと思い思い地下鉄の階段を上がる。と、目の前にはアラブ系、中国系、ターバン巻いた人や黒い人、「イギリス人は何処。ここは何?」そこが町はずれで外国人労働者の居住区だと言うことは、知る由もなかった。 あたりはすっかり暗く、いろんな人種の人達が行き交っている。酔っぱらいのアラブ人が大声で叫んでいる。地面には割れた瓶やゴミが散乱。思い描いていた憧れのビックベンやロンドンブリッジが音をたてて崩れていく・・・・ああああああぁ あっという間の転落人生。人とはもろいものである。 しかし、まだ軽いジャブにすぎなかった。 こんなことで挫けていてはいけない、眼孔の鋭さにはアラブ人に負けていなかった。住所といい加減な地図を頼りにひたすらストリートを探すが一向に見あたらない。どれぐらい歩いただろー、街灯も無く真っ暗、部屋の明かりもまばらだし人影も見えなくなった。何より重い荷物を担いで歩きすぎて足がだる〜 グギッ 鈍い音とともによろめく。荷物の重みとともに身体が沈んでいく。(何!何!何〜!) 一瞬なにが起こったのか分からず座り込んでしまった。しかしその理由はすぐに解った。ちょっとした段差に足がはまってしまい、足を挫いてしまった。気持ちも挫けてしまった。 「・・・・・・・・・・・・」 言葉も無かった。そして、そのホテルに行くことを諦める。 「はぁ〜どーしよ」 呆れにも、諦めにも似た深いため息。 当分座り込んでいたが?疲れと緊張、苛立ちと不安。いろんな感情が押し寄せイライラが頂点に達していた。さらに眼孔の鋭さにはアラブ人にも虎にも負けていない。もー怒っていた。 「こーなりゃ何処でもええわー」 緊張のせいか足の痛みも感じず、歩き始めた。そのストリートの先に明かりが見えた。虫のようにその明かりに引き寄せられた。そこには3段位の階段にガラス張りドア。奥には薄いリースが掛けてあり部屋の明かりが見える。ドアのそばで誰かが電話をしている影。上の看板にBed&Breakfastの文字。 「あっここB&Bだ。」 イギリスにはユースホステル以外にB&Bなどの安宿がたくさんある。しかもたいがい群れているので旅行者としては都合よくできている。ベルが見あたらずドアを叩いた。一向に出てくる気配がない、すぐそこに電話をしている人がいるのに・・・・。のぞき込むとフロントが見える、しかし誰もいない。(もうこの人に頼むしかない。)電話をしている人が終わるのを待った。よく見ると日本人風の女の子。(話が通じるかも!)一筋の光が見えてきた。電話が終わり、立ち上がると、彼女は気付いてくれた。 「すみません。入りたいんです・・・」 日本語で話しかけると、彼女は黙って行ってしまう。 「えっ?」もしかして無視・・・・。血の気が下がる思いがし、一筋の光は遠のいていく。 しばらくすると黒人のビッグママが出てきた。日本人のおじさんでも期待してたのか、ちょっとビックリした様子だった。寝間着姿で険しい顔をしている、その後ろにさっきの女の子。もう寝てたのか?と疑問に思い時計を見るとPM11:00。あっという間に時間がすぎていた。なんとかチェックイン。宿代は20ポンドで5ポンドのデポジット、安かった。その時の会話で女の子がモンゴル系の人だということが解った。どーりで日本人っぽいが、よく見ると民族っぽい服に顔もどこか泥臭さい。お礼を言うとはにかんでいる。けっこうシャイでかわいい。 ルームキーを手渡すとビックママもやっと笑顔をみせてくれた。部屋は3階正面の一人部屋、シャワールームとトイレは共同。シャワールームは暗く狭いがちゃんとお湯は出たが勢いはない。洗面所の水はけが悪くジャージャー水を流せないのがネック。ともあれ何とか宿にありつきほっと一安心。近所のマクドナルドで晩飯をすましシャワーを浴びてベッドに入る。テレビもない部屋だがフカフカのベッドが何より幸せ。すべてを忘れてぐっすり眠る。 こうして、イギリスにいるという実感のないまま慌ただしい一日目は終わった。
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